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疫学研究で見る野菜・果物摂取と健康の関係

2. 果物摂取と健康の関係

j. 大腸ポリープ

ポリープ(polyp)とは、消化管など粘膜に覆われた組織に発生する隆起状の病変の総称のことです。ポリープは消化管においては胃と大腸での発生が多く、大腸で発生するポリープを大腸ポリープといいます。ポリープには、ガン化しないタイプとガン化する可能性があるタイプがあります。大腸ポリープの中で最も多いのが「腺腫(adenoma)」と呼ばれるガン化しやすいポリープです。従って、腺腫は大腸ガンの前駆体で、腺腫の存在は大腸ガンのリスク因子です。なお、大腸ガンには、腺腫がガン化したものと腺腫に由来しないものがありますので、大腸に腺腫がないからといって決して大腸ガンにならないわけではありません。また、大腸に腺腫があるからといって必ず大腸ガンになるわけでもありません。しかし、腺腫の存在は大腸ガンのリスクを高くする要素であることに変わりはありません。数万人単位での大規模な疫学研究から、果実の摂取が大腸ポリープ発生のリスクを低くするという研究結果 1), 2), 3), 4) が出ています。

男性医療従事者を対象として米国で行われている大規模前向きコホート研究のHealth Professionals Follow-Up Study(HPSF)の一部として、1986年から1994年にかけて大腸内の内視鏡検査を受けた男性16,448人(40〜75歳)を対象に食物繊維の摂取量と腺腫の発生リスクの関係が分析されました 1) 。食物繊維の摂取量、さらに、食物繊維が由来する食品群を果実類、野菜類、アブラナ科野菜、穀類、小麦、豆類に分類した所、果実由来の食物繊維においてのみ摂取量が増えると結腸末端部での腺腫のリスクが下がり(P-trend=0.03)、果実由来の食物繊維の摂取量が最も多いグループ(8.4g/day)は最も少ないグループ(1.3g/day)に比べて相対危険度が19%低下しました。また、食物繊維を水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、セルロース、ヘミセルロース、リグニンに分類したところ、水溶性食物繊維のみ摂取量が増えると結腸末端部での腺腫のリスクが下がり(P-trend=0.007)、水溶性食物繊維の摂取量が最も多いグループ(9.4g/day)は最も少ないグループ(3.4g/day)に比べて相対危険度が31%低下しました。加工品も含めた青果物全体の摂取量と結腸末端部での腺腫のリスクの関係は、生果の果実の摂取が増えるとリスクが下がり(P-trend=0.03)、摂取量が最も多いグループ(3.4servings/day)は最も少ないグループ(0.4servings/day)に比べて相対危険度が27%低下しました。以上の結果より、果実類の消費を奨めていました。

女性看護師を対象に米国で行われたthe Nurses’ Health Studyの一部として、大腸内視鏡検査を受けた34,467人の女性を対象に、果実・野菜の摂取量と大腸の腺腫発生リスクの関係が分析されました 2) 。果実の摂取量が最も多い5servings/day以上のグループは最も少ない1serving/day以下のグループに比べて、リスクが40%低下しました(P-trend=0.001)。同様に野菜においても、摂取量が最も多い2servings/day以上のグループは最も少ない2servings/week以下のグループに比べて、リスクが18%低下しましたが、統計的には有意ではありませんでした(P-trend=0.10)。果実類について禁煙者と喫煙者に分けたところ、リスクは禁煙者では有意に47%(P-trend=0.004)低下したのに対し、喫煙者では36%低下しましたが統計的には有意ではありませんでした(P-trend=0.07)。この結果は、禁煙者の方が喫煙者より果実の恩恵を受けやすい可能性を示唆しています。

アメリカ国立癌研究所(NCI;National Cancer Institute)による前立腺ガン・肺ガン・大腸ガン・卵巣ガンスクリーニング試験(PLCO試験)の一部として、大腸内視鏡検査を受けた55〜74歳の男女32,470人を対象に果実野菜摂取量と腺腫発生の関連について症例対照研究 3) が実施され、果実摂取が大腸の中でも結腸において腺腫が発生するリスクを低くするという結果が出ています。

対象者を摂取量により5グループに分けたところ、果実では、摂取量が最も多いグループ(5.7 serving/day)は最も少ないグループ(1.2 serving/day)に比べてリスクが有意に25%低下しました。果実と野菜の総量でも同様に、摂取量が最も多いグループ(12.2 serving/day)は最も少ないグループ(4.7serving/day)に比べてリスクが有意に18%低下しました。野菜のみでは果実のような結果は出ませんでしたが、黄色野菜(冬カボチャ・ニンジン・サツマイモ)、緑色野菜(ブロッコリー・ホウレンソウ・カラシナ葉・リーフレタス)、ネギ・ニンニク類(タマネギ・ニンニク)に品目を限定した場合、リスクが低下しました。

腺腫の発生状況別に解析した結果、果実は腺腫の発生数や大きさによらずリスクを下げ、大腸内の部位別では結腸でのみリスクを有意に低くしました。また、果実を食品としてどのように摂取したかでは、果汁で摂取するより、固形状の生果や缶詰として摂取する方がリスクを低くする効果が高いという結果が出ました。以上の結果より、果実や緑黄色野菜の多い食生活は腺腫の発生リスクを低減するという結論を出していました。

米国のPolyp Prevention Trialでは、腺腫が発見された1,905人を対象に4年間追跡調査を実施し、無作為に被験者の一部に食事介入を行い、食事調査からフラボノイド摂取量と腺腫の再発生や進行リスクの関係が調べられました 4) 。フラボノイドの総摂取量だけでなく、フラボノイド含量の食品データーベースを利用して、フラボノイドを6つサブグループに分類した場合、さらに、フラボノイドの29成分についても解析しました。その結果、フラボノイド総摂取量は腺腫の再発進行のリスクとは統計的な関連性はありませんでした。一方、サブグループのフラボノールについては、摂取量が最も多いグループ(>17.30mg/1000kcal)は最も少ないグループ(<8.12mg/1000kcal)に比べてリスクが有意に76%低下しました(P-trend=0.0006)。代表的なフラボノールはケルセチンで、リンゴ、タマネギ、ブロッコリーが主要な摂取源です。以上の結果から、果物や野菜からフラボノールを摂取することが腺腫の再発進行のリスクを低減することを示していました。

以上のように、果実の摂取が大腸ガンの前駆体である腺腫、いわゆる大腸ポリープの発生リスクを下げる効果があることが疫学研究レベルで示され、さらに、成分レベルでの解析も進みつつあります。

(文責:野口真己)


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