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疫学研究で見る野菜・果物摂取と健康の関係

2. 果物摂取と健康の関係

f. 関節リウマチ

関節リウマチは、自己免疫が主に手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる炎症性自己免疫疾患で、からだの多くの関節に炎症が起こり、関節がはれて痛む進行性の病気です。長期間にわたって進行すると関節の変形と機能障害が起こります。30歳代から50歳代で発病する場合が多く、また男性よりも女性の方が約3倍多いといわれており、その原因は不明です。30歳以上の人口の1%にあたる人がこの病気に罹っていると推計されています。

関節リウマチの発症メカニズムには関節滑膜組織にリンパ球・マクロファージなどの白血球が遊走することで関節局所において免疫応答が起こり、リンパ球やマクロファージが産生するサイトカインの作用によって炎症反応が引き起こされます。進行すると軟骨・骨が破壊されます。以前は慢性関節リウマチと呼ばれていましたが、2006年から関節リウマチに変更されました。

一方、果物にはビタミン・カロテノイド・フラボノイド等の抗酸化物質が多く含まれていますが、近年の疫学研究から、β-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどの血清レベルが高いほど酸化ストレスが低く、また血中の炎症性マーカーの値も低いことが報告されるようになってきました 1), 2), 3), 4) 。これらの研究から、抗酸化作用・抗炎症作用を有するビタミン・カロテノイドが滑膜組織における酸化ストレスを抑制することで炎症を抑え、関節リウマチの進行を抑制したり、炎症に伴う痛みを軽減したりする効果が期待できるのではないかと考えられます。

実際にParedesらは、関節リウマチ患者30名の血中酸化ストレスマーカーや炎症性マーカーが健常者に比べて有意に高く、またビタミンEなどの血清中抗酸化物質レベルが低下していることを見いだしました 5) 。また米国やフィンランドで行われたコホート内症例対照研究でも、関節リウマチ発症患者では調査開始時における血清ビタミンEやβ-カロテンレベルが低かったとする報告があります 6), 7) 。これらの研究から、ビタミンやカロテノイドが関節リウマチの発症予防に有効ではないかと考えられるようになりました。

抗酸化物質の摂取量と関節リウマチ発症リスクとの関連を大規模なコホート研究から示した報告があります。Cerhanらは41,836名を対象にした大規模疫学研究であるIowa Women’s Health Study Cohortから、29,368名についてビタミン・カロテノイド等の抗酸化物質摂取量と関節リウマチ発症リスク低減効果について11年間の追跡調査を行ったところ、β-クリプトキサンチンの高摂取群において関節リウマチの発症リスクが0.59まで低下し、このような関連は他のカロテノイドではみられなかったと報告しています 8)

またPattisonらは、関節リウマチの前段階とも云える炎症性関節炎と抗酸化物質との関連について検討を行っています 9), 10) 。炎症性関節炎を発症した73名についてコホート内症例対照研究を行った結果、果物・野菜、またこれらに多く含まれるビタミンCの摂取量が少ないと炎症性関節炎のリスクが上昇することを見出し、特にビタミンCの重要性を指摘しています 9) 。一方、カロテノイド摂取量について検討した結果では、β-クリプトキサンチンの摂取量が多い群ではリスクが0.42まで低下したと報告しています 10) 。興味深いことに、この研究においてもCerhanら 8) の研究結果と同様に、カロテノイドではβ-クリプトキサンチンのみに有意なリスク低減が認められています。一方、Roosらは200名の症例対照研究から、血清β-クリプトキサンチンの高レベル群では変形性膝関節症のリスクが0.36であったと報告しています 11)

更に最近では、果物・野菜、魚が豊富で飽和脂肪酸の摂取量を抑えた食事介入を行うことにより、関節リウマチ患者における関節の痛みやこわばりが緩和されたとの報告もあります 12)

以上これらの研究から、ビタミンやカロテノイドの豊富な果物の摂取は、抗酸化・抗炎症作用により、炎症性関節炎や関節リウマチの予防、またこれらの疾患に伴う痛みの軽減に有効であることが考えられます。特にビタミンCやβ-クリプトキサンチンを豊富に含むカンキツ類、とりわけ日本のミカンはこれらの疾患予防に有効である可能性が高いものと期待できます。

(文責 杉浦 実)


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