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国産やさいの情報提供の推進

調理特性等の調査の実施

本取組は、「特定非営利活動法人野菜と文化のフォーラム」に委託し、当小委員会に設置されている「作業部会」を中心に国産野菜の官能調査、呈味成分の分析等の調査を実施した。
【特定非営利活動法人野菜と文化のフォーラム】

取組概要

平成20年度副菜摂取改善対策事業においては、野菜のおいしさ検討部会(以下「部会」という。)を設置し、指定野菜の中から数品目を選定し、栄養学、調理学、農学等の学識経験者に協力いただき、野菜のおいしさに関する共通認識の整理、野菜の官能評価試験方法等の検討を行うこととした。部会においては、ニンジン、ダイコン(根菜類)、レタス(葉茎菜類)、ナス、ピーマン(果菜類)等を対象として官能評価試験及び理化学的な評価を行うための機器分析試験等を実施した。

検討結果からは、機器分析値と官能評価を直接結びつけることは難しい品目があることや、特に加熱した場合には、未知の成分の相乗作用によるものと思われる傾向がみられた。ナスにおいては、果実の密度、硬さ等の肉質が食感に影響することや、消費拡大の手掛かりを掴む視点から実施したピーマンのアンケート調査からは、おいしさよりも料理の彩りの視点から選んでいる消費者が多いことが明らかになり、野菜品質評価の複雑、深遠さが浮き彫りなった。  部会において、過去の嗜好型官能評価の結果からも、煮物にする場合の出汁成分との相乗効果の影響が指摘されているが、野菜のおいしさの評価は、生食中心であり、煮物など調理品についての評価方法が確立されていない状況にある。

1. 品目別の調査概要

本年度は、野菜への関心の高い社会人を官能評価のパネルとし、煮物における出汁成分とのうま味の相乗効果の検出を目標とした。

(1) ニンジン「向陽二号」、「愛紅」、「ひとみ五寸」、「国分」、「黒田五寸」について「生」と「煮物」の官能評価を行った。前3者間の比較ではグルタミン酸の含量が(9~16mg/100g)と期待したほどの差がなかったこともあり、煮物の場合、出汁成分(イノシン酸)との相乗作用による「うま味」の増加では説明できなかった。一方、生で評価した場合、「ひとみ五寸」は最も甘いとされるが、糖含量が他よりも高いとはいえなかった。「ひとみ五寸」はやわらかく、水分の多い品種であるため、食感(物性)との関係で解析する必要がある。「向陽二号」と「国分」、「黒田五寸」の「煮物」を比較した結果、ミネラルやグルタミン酸などのアミノ酸含量の高い「国分」が「向陽二号」よりも「うま味」や「滋味」が強いと評価され、33mg/100g(「向陽二号」の倍)含まれるグルタミン酸は十分に認識された。ただし、「国分」は色が好まれず、ニンジン臭さが強いため、「おいしさ」の評価は低かった。また、結果を科学的に裏付けるため、成分分析も合わせて行った。ダイコンにおいてもうま味の相乗効果によって説明できそうな現象が認められたので、ダイコン、キャベツについてもニンジン同様に嗜好型の官能評価と成分分析を合わせて行った。

(2) ナスについては、「巾着」、「庄屋大長」、「千両二号」、「サラダ紫」の4品種について、「生」、「蒸す」、「揚げる」の3種類の方法で調理し官能評価したところ、次のような結果が得られた。「巾着」は加熱すると柔らかく、うま味、甘味が強まり、ぬめりも出て独特のおいしさが出る。「庄屋大長」は加熱すると皮、果肉は柔らかくなるが、生でも加熱してもおいしさに大きな差は見られない。「千両二号」は外観、香り、味の点では調理方法に差はないが、加熱するとテクスチャーが向上した。「サラダ紫」は、色、テクスチャーの点で生食が適している。

(3) 子供の嫌う野菜として以前はニンジンが知られていたが、現在はピーマンが最も嫌われるとされる。ピーマン嫌いを解消できれば、その手法を他の野菜にも応用することによって、需要の拡大につながると期待できる。そこで、ピーマンのどのような点が嫌われ、どのように品質改善が望まれるのかアンケート調査を試みた。さらに、調理によるピーマンの香味改善の可能性を探った。ただし、ピーマンの嫌われる要因とされる苦味については、文献調査の結果、成分が同定されておらず、ピーマン臭物質であるピラジン類についてはごく微量しか存在しないため、分析が非常に困難である。そのため、本検討部会では理化学評価は行えなかった。

2. 問題点と今後の展望

比較的品質のよいニンジンでは、糖含量がおいしさの決め手にはならず、ナスについても同様であった。煮物にした場合、野菜中のグルタミン酸と出汁のイノシン酸との相乗効果によりうま味が強まる可能性はあるものの、アミノ酸の分析値からおいしさや野菜らしさが推定できるには至っていない。ナスのクロロゲン酸が渋味に関係すると報告されているが、今回の検討結果では、クロロゲン酸含量に差はあっても、それが渋味の差としては認識されがたいと判断された。調理方法によってピーマンの苦味や臭いを減じることができるが、苦味成分については現在同定されておらず、理化学的な解析が進まない状況にある。

これまでの検討委員会・検討部会の理化学的評価方法は、既成の物差し(主に化学分析)を各種野菜にあててみるという方法であった。一部の野菜における糖含量のように、官能評価の結果と一致するものも確かにあった。しかしながら、官能評価結果が化学分析値からだけでは説明できない場合もみられた。一方で、「ニンジンらしい味」、「ホウレンソウのアク」、「ナスの肉質と味の関係」、「ピーマンの苦味」など、既成の物差しでは測れない項目があることが認識された。これら既成の物差しで評価できない項目は、野菜のおいしさを研究するうえでキーでもあり、じっくり構えて試験するための検討材料となるだろう。今後は新たな物差し作りが必要である。そのためには、各品目について単発的な試験ではなく、品目毎に継続的な研究・試験を行う必要がある。本検討部会で出た疑問点、問題点などが、園芸や調理、食品分野の研究者が腰を据えた研究を開始するためのヒントになれば幸いである。


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