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野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向

4. 野菜に含まれる個別成分の機能性に関する研究調査

a. 野菜個別成分の機能に関する研究の調査

未知の天然物や合成化合物の生体への影響を調べる場合、まず動物を用いて検討することから始まります。これは安全性の確保と倫理的な理由によりますが、食品の場合はその人にとって初めての食べ物でも躊躇することなく、食べてしまいます。何故なら食経験があることから、安全性は担保されているという認識があるためです。この食経験の定義は明確ではありませんが、一般的には一万人のヒトが30年間食べ続けて健康上の問題が起こらない場合、「食経験がある」ということになっているようです。しかしながら、食品でもその個別成分だけの作用を検討する場合は、摂取する形態も量も異なりますので、最初からその作用をヒトで調べるのは好ましいことではありません。個別成分が摂取対象の場合は食経験があるとは言えませんので、まずは実験動物を用いてその影響を観察することになります。そしてその臓器や組織、細胞などをうまく使うことによって分子レベル・遺伝子レベルの影響まで知ることが可能になります。

野菜の個別成分に関する科学論文はたくさん発表されていますが、大切なのは箇々の論文だけで判断せず、下図に示すようにあらゆるレベルの結果を総合的に把握して判断することです。

野菜個別成分の作用を正確に把握するために
(図)野菜個別成分の作用を正確に把握するために

野菜個別成分の機能に関する基礎研究の調査:

今回の調査対象とする野菜の個別成分としては、下表に示すようなよく知られている成分を27種類選んで、全ての医学生物系分野における発表研究論文数を集計しました(表1)。なおここで示した成分名は、分類の仕方や考え方によっては重複したりするものもありますが、論文の著者の研究に関する意向を尊重するためと、実際にいろいろな呼ばれ方をしているので、論文に掲載されている名称のままを検索し表示しました。なお、今年度の調査対象期間は従来通り2009年1月1日から12月31日までとしました(表中のSBはSoybeanの略)。

表1 調査対象として取り上げた野菜成分と検索ヒット件数
Allyl-sulfide:9 (5) Daidzein:47 (55) Lutein:17 (29) Resveratrol:187 (198)
Apigenin:39 (63) Diosmin:6 (4) Luteolin:26 (44) Saponin:233 (243)
Beta-carotene:47 (68) Flavanone:15 (21) Lycopene:23 (31) Silymarin:56 (540)
Capsaicin:294 (357) Genistein:154 (175) Morin:51 (16) Sitosterol:22 (41)
Carotenoid:527 (658) Hemicellulose:11 (22) Phytosterol:75 (103) SB-isoflavone:41 (63)
Coumarin:78 (59) Hesperidin:23 (35) Polyphenol:118 (128) Soy-protein:149 (255)
Curcumin:199 (191) Limonene:33 (28) Quercetin:170 (196) SUM: 2649 (3412)

また、表2に示した4成分についても、その中枢機能を追加的に調査しました。このうち、アルファリノレン酸はシソ油、エゴマ油、アマニ油に多く含まれる必須脂肪酸で、俗にアレルギー、ガン、高血圧を改善するなどといわれていて、多くの研究対象にもなっています。一方、アホエンは大蒜(ニンニク)を加熱調理中に生じる成分であり、アリシンやアリインのようなイオウ化合物を含んだ揮発成分として、その健康機能が期待されています。なお、ラクチュコピクリンはワイルドレタスに多く含まれる成分ですが、一時その催眠作用がねつ造という形で報道されたことで一般にも知られるようになりました。

表2 今回追加した野菜成分
名称 検索キーワード 含有野菜
アジョエン ajoene 油で加熱した大蒜中にあらわれる成分
αリノレン酸 α-linoleinic acid シソ、エゴマなど緑葉に多く含まれている
ラクチュコピクリン lactucopicrin レタスに含まれるポリフェノールの一種
レシチン lecithin 大豆や酵母中に含まれるリン脂質

(文責 篠塚 和正)


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