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野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向

5. 果物の機能性に関する研究動向

k. 小さな脂肪細胞を作るカンキツ成分

メタボリックシンドロームは脂肪細胞の肥大化が原因であるといわれています。しかし、小型の脂肪細胞は本症候群を予防改善することが知られており、肥大した脂肪細胞とは正反対の性質を持っています。このように脂肪細胞は本症候群の発症と予防・改善・治療の両面において重要な役割を果たしています 1) 。そこで、小さな脂肪細胞を増やせばこれらの病気が予防・改善されることが期待されます。実際、脂肪細胞分化を促進し小さな脂肪細胞を作り出す作用をもつ化合物が糖尿病や高脂血症の治療薬として用いられています 2), 3)

カンキツにはヘスペリジン、ナリンジンなどのフラボノイド成分が特徴的に多く含まれ血中脂質の改善などの効果が報告されています。そこで、これら成分について脂肪細胞に対する作用が調べられたところ上記治療薬と同様に脂肪細胞分化を促進することが分かりました 4) 。また、作用機序についても検討され、脂肪細胞分化に重要な役割を果たしている核内受容体の一種であるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対して、ヘスペレチンはリガンドとして作用し活性化することがわかりました 5) 。このPPARγに対してリガンドとして作用する化合物は上記糖尿病治療薬として利用されておりヘスペレチンがこの糖尿病治療薬と同じ作用機序を示すことが明らかとなりました。

最近、ヘスペリジン、ナリンジンなどの基本骨格であるフラバノンにも脂肪細胞分化促進、PPARγのリガンド活性、アディポネクチン上昇などの作用が見出されたことから、このような作用はフラバノン類化合物一般の機能性であるのではないかと考えられます 6)

また、ポンカン、シークワシャーなどに比較的多く含まれる成分であるノビレチンやタンゲレチンも脂肪細胞分化を促進することが見いだされました 7) 。そして、フラバノンと同様にメタボリックシンドロームに対して予防・治療的に働くアディポネクチンや血中グルコースの低下に重要なグルコース輸送担体4(GLUT4)などの遺伝子の発現を高めることも分かりました。しかし、その作用機序はフラバノンとは異なりノビレチンはPPARγのリガンドとしては作用せずシグナル伝達系のより上流のCREBなどに働き活性を高めることが分かりました。他方、ノビレチンにPPARγのリガンド活性を認める報告もあることから 7) 、今後作用機序の詳細な検討が必要と思われます。

一方、肥大した脂肪細胞の中は脂肪で満たされていることから、この脂肪を分解すれば脂肪細胞を小さくすることが出来ます。ノビレチンには脂肪細胞中の脂肪を分解する作用も見いだされています 7) 。したがってノビレチンは脂肪細胞分化と脂肪分解の両作用で脂肪細胞をより小さくすることが期待されます。

また、カンキツに含まれるオーラプテンにも脂肪細胞分化促進、PPARγのリガンド活性、アディポネクチン産生増強などの作用が見いだされています 8)

このように最近では糖尿病や高脂血症の治療薬と同じような作用機序を有するカンキツ成分が多く見つかりはじめています。今後も多くのカンキツ成分に脂肪細胞に働きかけメタボリックシンドロームを予防する新たな機能性が見いだされることが期待されます。

飽食の現在は肥満すなわち脂肪細胞の肥大化を原因としたメタボリックシンドロームが急増しています。ここで紹介したカンキツ成分は脂肪細胞に働きかけ脂肪細胞を小さくする作用を持っていますのでメタボリックシンドロームの予防にも有効なことが期待されます。

(文責 関谷 敬三)


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