ファイブ・ア・デイ協会(5 A DAY)は、「1日5皿分以上の野菜と200g以上の果物を食べましょう」をスローガンにバランスのとれた食生活の重要性を啓発しております。
  ファイブ・ア・デイ協会(5 A DAY)は、「1日5皿分以上の野菜と200g以上の果物を食べましょう」をスローガンにバランスのとれた食生活の重要性を啓発しております。
  その活動の一環として、2003年12月4日、青山ダイヤモンドホールにて“現代人の健康と野菜・果物摂取の重要性”をテーマに、第1回目の『5 A DAY野菜・果物摂取による健康づくりセミナー』を開催いたしました。
  神林章夫ファイブ・ア・デイ協会(5 A DAY)理事長による主催者挨拶、服部幸應顧問からのメッセージご紹介に続き、野菜・果物の摂取はがんなど生活習慣病予防に効果的であるか、その科学的根拠はどのようなものかについて、3名の専門家の方々から、それぞれの分野における最新の研究成果や研究の動向をお話しいただきました。
  またプログラム後半ではファイブ・ア・デイ協会(5 A DAY)および会員企業が現在取り組んでいる食育活動をご報告いたしました。
  今回のセミナーでは特に、野菜・果物と疾病予防の関係性についての最新の情報に、企業や栄養士の方々をはじめとする参加者の皆さまの関心が集まりました。
この講演内容について、以下にダイジェストでご紹介いたします。
「現代人の健康と野菜・果物摂取の重要性」
●年齢別死亡者数のグラフの変化(1950年と1995年の比較)

名古屋大学大学院生命農学研究科 教授
▲記念講演
独立行政法人 国立健康・栄養研究所 理事長  東京医科歯科大学 名誉教授
田中 平三氏

日本がまだ貧しかった1950年当時の年齢別死亡数をみると、0歳、20歳、70歳の3か所にピークが認められます。その内訳はそれぞれ「出産にまつわる死亡(乳児死亡)」「偶発的原因による死亡(結核など感染症、事故・自殺)」「老化による死亡(脳卒中、虚血性心疾患、がんのような生活習慣病)」となっています。
  しかし近年(1995年)になると、乳児死亡、結核、そして急性感染症、低栄養が克服され、0歳、20歳のピークは消失してしております。死亡分布曲線は、35〜40歳から緩やかに上昇し、70〜80歳でピークとなり、その後、急激に下降。これはすなわち生活習慣病が死亡分布曲線の大部分を占めていることを意味します。35〜65歳における早期死亡は、遺伝要因に加えて、食事、労働・運動、喫煙、飲酒等の生活習慣によることが明らかになっておりますので、生活習慣を適切に営むことによって、生活習慣病の罹患をできるだけ遅延させることが重要であると言えるでしょう。

●生活習慣病予防と野菜・果物摂取の関連性
  野菜・果物は、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれているほか、さまざまなフィトケミカルが含まれており、抗酸化作用、免疫機能強化等の効果があることから、生活習慣病に対し予防効果があるとされています。
  野菜・果物が、代表的生活習慣病である脳卒中や虚血性心疾患、また部位によっても異なりますが、がんのリスクを低下させるとする疫学的研究は多くでています。
  「食生活指針」に示されているように、主食、主菜(蛋白質)、副菜(野菜)、果物をバランスよく摂取することが生活習慣病の予防につながり、ひいては、長寿につながるのです。

●野菜・果物摂取量の目安
  「健康日本21」では、国民の生活習慣病予防の観点から、一日の野菜摂取量を増加させようと、一日の野菜摂取量を350gとしています。この350gという基準は、食物繊維、ビタミンC、カリウムなどの栄養素を一日に必要なだけ摂取するために、どれだけの野菜を食べればよいかという見方から導きだされたものです。
  しかし現状での野菜摂取量を見ると50・60代の人たちは350g近く摂取できているのですが、若年層では非常に少ない。そこで「5 A DAY」のように一皿70gの量の野菜が摂取できる料理を一日5皿食べましょう、とわかりやすく伝える動きがでてきました。
  また、果物は200gの摂取が目標となっておりますが、これも野菜と同じように、若い人では摂取不足の状況です。一日みかんなら2個、りんごなら1個を目安にさまざまな種類の果物を食べるようにしてほしいと思います。
  野菜一皿70gのような単位をサービングザイズと言いますが、日本ではまだこのような考えが普及しておりません。サービングサイズが明示されたメニューをレストランでだしてもらったり、デパートの惣菜売り場で70gの倍数に小分けしたものを販売してもらったりすることで、一般の人にも理解が広がるのではないでしょうか。

●まとめ
  ご飯という主食を維持し、さまざまな食べ物をバランスよく摂ってきた『日本人の食生活のいいとこ取り』が、健康で長生きするようになった大きな要因です。
  しかし、現代の若者は食生活が乱れ、生活習慣病罹患の危険性と隣り合わせとなっています。現在不足しがちな、またさまざまな疾病を予防する可能性が高い、野菜や果物をきちんと摂取し、バランスのよい食生活を送ってほしいと思います。

●世界の主な疫学研究評価活動
名古屋大学大学院生命農学研究科 教授
▲特別講演
国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部長
国立がんセンター研究所 臨床疫学研究部長
津金 昌一郎氏 「野菜・果物摂取による がん予防」
 例えば“野菜・果物が、がんを予防する”という疫学研究の結果がひとつでただけでは、国民にがん予防のために野菜・果物をきちんと食べましょうとすすめることはできません。やはり科学的根拠はどこまであるのかを評価し、それを積み重ね、根拠がある程度明らかになって初めて野菜・果物の摂取を、公にみなさんに推奨できるのです。
  そうした評価がいろいろな国際機関で行われております。1997年には「世界がん研究基金(World Cancer Research Fund)」「アメリカがん研究所(American Institute for ancer Research)」が世界の研究者を集めて、膨大な文献をレビューし、まとめた結果を評価しました。そして、野菜については5部位において、果物については4部位において、“確実(convincing)”にがんを予防すると報告しています。
  それから5年が経過した2003年、「世界保健機構(WHO)」と「食糧農業機構(FAO)」、また「国際がん研究所(IARC=WHOの一機関)」が、より信頼性の高い疫学調査の結果を受けて評価会議を行いました。
  WHO、FAOの『「食物・栄養と慢性疾患予防」に関する報告書』では、「口腔」「食道」「胃」「大腸」の4部位において、野菜・果物が“おそらく(probable)”がんを予防すると結論づけ、“がん予防のために、少なくとも一日400gの野菜・果物を摂るように”との指針がだされました。
  IARCの評価会議では“おそらく”予防的と結論づけたものは、野菜では「食道」「大腸」の2部位、果物では「食道」「胃」「肺」の3部位と、WHO、FAOの報告同様“確実(convincing)”に予防するとの評価はありませんでしたが、2003年3月のIARCプレスリリースでは、がん予防だけではなくトータルな疾病予防の観点からも、引き続き野菜・果物をたくさん摂取するように努力すべき、とのメッセージを政府・企業・消費者に示しています。

●日本における疫学研究結果概要
  では、欧米社会とは大きく異なる食文化を有する日本人についてはどうでしょう。次に我々が実施した日本における二つの研究結果を紹介したいと思います。
野菜・果物摂取と胃がん罹患リスクとの関連を調べた「コホート研究」※1では、日本の4地域に居住する40〜59歳の男女計4万人について、食習慣を調査した後に10年間追跡した結果、404名が胃がんに罹患しており、野菜・果物の摂取量が特に少ない人グループで、胃がんリスクが高いことが示されました。特に、加齢と共に罹患率が高くなる分化型胃がん※3において、総野菜摂取量が減る程、リスクが増大するという傾向がみられました。
  もう一つは、アブラナ科野菜、キノコの胃がん・大腸がんとの関連性についての研究ですが、これは「症例対照研究」※2でバイアスが入りやすいすので、コホート研究より信頼性が落ちるということを割り引いてみる必要があります。
  長野県内の4病院で収集した胃がん症例149、対照287、大腸がん症例115、対照230例について、過去の食習慣を食物摂取頻度票により調査しました。食品別に摂取量で3群に分けた最も少ないグループに対する最も多いグループのリスクは、胃がんについては白菜、ブロッコリー、ぶなしめじ、なめこで、大腸がんについては野菜全体、低カロテン含有野菜、ブロッコリーで減少していました。
  これら2つの研究結果は、あくまでも単一の研究からのデータであることを留意すべきであり、日本人での野菜・果物によるがん予防効果についてのさらなる検証が必要と考えております。

●まとめ
  野菜・果物のがん予防効果ついては、がんの部位にもよりますが、必ずしも確立した関係ではありません。今後さらに野菜・果物の成分とがん予防との関係を研究していかなくてはならないところですが、“可能性が高い”という部位がたくさんあることと、循環器疾患予防を含むトータルな疾病予防の観点から、野菜・果物を多くとる食生活は推奨されるといえるでしょう。

※1:コホート研究/疫学の研究方法のひとつ。多数の健康人の集団を対象として、最初に生活習慣(食生活、喫煙など)や生化学的データを調べ、その後の一定期間の疾病発症を観察するもの。多人数を長期間観察する調査のため、手間と時間はかかるものの結果の信頼性は高い
※2:症例対照研究/すでに疾病にかかった人を“症例”とし、症例と性別や年齢などの要因が似た“対照”を選んで、疾病の原因と考えられる食生活などを、過去にさかのぼって調査し、両者で比較。ただし、“思い出し”ながらの調査になるためバイアスが入りやすい
※3:分化型胃がん/比較的悪性度の低い胃がん

●がん予防の12食品群
名古屋大学大学院生命農学研究科 教授
▲特別講演 2
名古屋大学大学院生命農学研究科 教授
大澤 俊彦氏
「野菜・果物中の抗酸化性分の機能」
 1990年アメリカで、植物性食品とがん予防の関連性を科学的に証明しようというデザイナーフーズ計画がスタートし、95年には「国立がん研究所(NCI/National Cancer Institute)」の疫学研究成果を背景に、がん予防の可能性が高いと思われる植物性食品を40品目ピックアップされました。これがデザイナーフーズピラミッドです。
しかしこれは少々わかりにくいため、私は日本人になじみ深いさまざまな野菜や果物、香辛料や海草類を“がん予防の12食品群”としてまとめてみました。がん予防成分の多くは、他のさまざまな成分と影響しあいながら、総合的にがんを予防しているのです。ですからひとつの特定の野菜を食べ続けるのではなく、この12食品群などをもとに、いろいろな野菜を食べること、『5サービング』の考えを持つことが重要と言えるでしょう。

●活性酸素および抗酸化物質について
活性酸素は我々にとって諸刃の剣です。活性酸素はウイルスや病原菌の殺菌に必要な物質であり、細胞内、細胞間の情報伝達物質の働きも持っています。また血管拡張作用がある一酸化窒素も活性酸素の一種です。
しかしバランスが酸化に傾いたときには、老化、がんをはじめとした生活習慣病などの原因になってしまうのです。
体内でおきる酸化現象を総じて酸化ストレスといいますが、我々の研究グループでは20年近くにわたって、こうした酸化ストレスを防ぐ食品を探してきました。その結果、抗酸化物質を含む食品の8割が植物性ということがわかりました。それもできるだけ野生の方がよいという結果となっています。

【以下、この日都合により欠席されたジョンズ・ホプキンス医科大学 教授ポール・タラレー氏の研究紹介】
●抗酸化物質による解毒酵素の誘導効果
抗酸化物質の一番の機能は、抗酸化活性ですが、その他には解毒酵素を誘導する機能、免疫機能を高める機能があります。発がん性の物質の多くはそのまま遺伝子に影響を及ぼすことはなく、肝臓で活性体になったときに影響を及ぼしますが、この活動を抑えるのが、第二相の解毒酵素(フェーズ2酵素)です。これが活性化した発がん物質を無毒化して、細胞の外に出す働きをするのですが、この作用を高めようという研究を、世界に先がけて行ったのがポール・タラレー氏です。
我々が300種以上の野菜の解毒酵素誘導効果を調べた結果、この効果をもつものはアブラナ科野菜が圧倒的に多く、また効果が強いものには、味やにおいの強いものが多いこともわかっています。果物の中では、パパイヤの解毒酵素誘導効果が特に強いという結果でした。
そしてブロッコリーにも解毒酵素誘導の働きをするスルフォラファンという物質が含まれているのですが、これを発見したのがタラレー氏でした。
タラレー氏の実験では、スルフォラファンの解毒酵素誘導効果が最も強かったのはブロッコリーの種子の状態でした。発芽させてみたところ、誘導効果は下がりましたが、それでも生のブロッコリーに比べて強く、発芽後三日目のスプラウトでも、ブロッコリーに比べ20〜30倍以上の解毒酵素誘導作用があることがわかりました。
またタラレー氏の別の研究では、スルフォラファンにはピロリ菌を駆除する力が非常に強いこともわかってきています。

●まとめ
このタラレー氏の研究によってピロリ菌の駆除と解毒酵素の誘導という、二つの世界的に注目される機能がブロッコリーを中心とするアブラナ科野菜にあるということがわかりました。しかし、アブラナ科だけではなく、ユリ科、ウコギ科の野菜やゴマ、ウコンなどにも同様の作用があるということもわかってきています。
みなさんには、まずはあまり機能にとらわれずにいろいろな野菜を料理してほしい。そして徐々に、どんな野菜にどんな成分が入っているかを頭に入れてバランスを考えていっていただきたい、ということが我々の思いです。

 
(c)2002-2007 5 A DAY Association-Japan All Rights Reserved.